2023/9/10 - 10/9 で読了。坂本龍一さんが愛読していたというのでミーハー買いした。
凄かった、長かった、面白かった。これで税込649円なんてお得すぎる!(漱石の作品を読むのは『草枕』以来、でGREEのレビューによると 2004/6/22 に読了してた。19年前!!)
心理描写の細かさというか執拗さが凄い。ほぼ一言動ごとに推量や考察が入るほどのコマ送りぶり。
『野火』読んだ時も感じたが、昔って技術もメディアもそんなに発達してないし人権意識も低いし、人々も大雑把に生きてたんでしょ?みたいについ現代の我々は思ってしまうが、そんなのがとんだ偏見であることを教えてくれる作品であった。満ち満ちた痺れるほどの「女々しさ」。
俺らの大好きな『山月記』ですら1942年らしい。その30年前にこれが朝日新聞に連載されていたとは。
形式的な主人公は二郎だが、実質的な主人公は兄の一郎。(→三沢は第三の男ということ? 重は四、直は七??)
はじめ「気難しい兄」程度だった一郎の狂気は終盤加速していき、「哲学病に取り憑かれた」というか、庶民風に言うと「頭良すぎておかしくなった人」みたいになってしまう。
若気の至りって歳でもないのに……でも、私には一郎の突き詰めて考えてしまう性分は、わかる気はする(私には一郎のような能力も地位もないが)。
ある種の人には、そんなことを考えてしまう時期があるのかもしれない。生活に喫緊の苦労や危険がないと。
気になった表現たち
ありすぎるので「p.」は省く。
- 14 子供が出切るのが怖い
- 30 (結婚が決まるのが)あんまりお手軽過ぎて
- 59 酒の力で一つ圧倒して遣ろう
- 72 ツンデレ三沢w
- 83 三分の一煙(けむ)
- 86 知人の家に嫁(よめ)らした
- 94 黒人(くろうと)
- 100 水滸伝
- 105 「佐野は瞞されても然るべき」ひどいw
- 109 狐鼠々々
- 135 「人間もこの通りだ」w
- 147 スピリットも攫まない女
- 170 車夫 大正の格差社会。
- 178 ギヤマン細工
- 209 女々しい兄
- 223 「どうでも能くってよ」
- 229 綾成(あや)す
- 233 堂摺(どうする)連!「娘義太夫」の追っかけ。
- 241 囀る女 Twitter!
- 247 頭を掻く真似 100年以上前からあった仕草か。
- 248 「今聞かせられている」w
- 258 「実際の所それが世の中」やるせない現実。
- 267 「男は情慾を満足させるまでは、女よりも烈しい愛を相手に捧げるが、」
- 272 銅版(画) 略すのね
- 273 上滑りの御上手もの
- 278 「こおろぎ」の漢字が印字されてない?
- 292 己は一時の勝利者にすらなれない
- 325 塵労(じんろう)
- 328 手爪先の尋常な女
- 335 親の手で植付けられた鉢植
- 339 ミステリアス嫂。素敵だが、女性の安易な神格化ではないか?
- 345 「のんこう」って何よ!
- 348 「どうも驚くね世の中の早く変るには」って1912年のおじさんが言ってる。
- 348 遠慮が無沙汰
- 353 なまめいた匂い(妹の部屋)
- 356 恐ろしいX(エッキス)
- 359 ぼんやりしさ加減
- 363 夷然(いぜん)として
- 368 過去の詩を投げ懸け
- 372 王室の式微
- 375 「舞楽」耽美性すごい。
- 378 「三人の男」まるで私小説のように実体験を利用しまくってる(と解説にある)。
- 395 contradiction in terms
- 399 自烈たい部に属する人間の一人
- 402 珊瑚樹
- 406 屈強の道具
- 408 二六時中何をしても、其処に安住する事が出来ない
- 410 恐ろしいという言葉を使っても差支ないという意味
- 413 敬虔の念!
- 415 第一原因
- 417 実際兄さんの好いていたのは、修善寺という名前
- 427 人生の上に於てどんな意義になるでしょうか
- 443 すべからく〜せざるべからず 二重否定版もあるのか。
- 444 兎角の是非を挟(さしは)さむだけの資格
- 446 調査する人 vs 実地の人。わかるぞ兄さん!
- 447 「和して納まるべき特性をどこか相互に分担して前へ進める」妙言。
- 449 「男二人の事ですから、煮炊は無論出来ません」そういう時代か
- 450 トマトー
- 452 実は的確に読解していたHさん
- 458 意解識想
- 462 「スポイル」もう使われてたのか。
誤記?
- 487 先方を研究 ←戦法では? 意味通らなくもないが