武書房

GREEのレビュー機能が終わるので今後はこっちに書きます。

未完の天才 南方熊楠

2023/8/17-18 で読了。

みんな大好き・天才熊楠がやったことを概説してくれる新書でした。面白かった。
私も「粘菌とかを研究した大天才」ぐらいの知識しかなかったので、その活動内容をある程度知れて良かった。

なんとなく「孤高の天才」というか、俗世に興味ないディオゲネス的な人だったと想像してたが、わりと人間くさい面もあったというのが新鮮だった。
人付き合いを避けてたとか共感できすぎるやんw

フィールドワーク主体の人かと思ったら、それ以上に本から学びまくる!「書物至上主義」者であり、重要な本を書き写す「抜書」をライフワークのように続けていた。「人類史上、もっとも字を書いた」人間とも言われてるらしい。
「書いて覚える」は私も大学受験の時に自力で発見したし、私も記録魔の気があるので(熊楠と比べるのは僭越すぎようが)わかる気がする。

しかも熊楠は多言語を扱えた(p.104)。
話せたのは英語で、漢文と仏西独伊羅は読み書き程度だったようだが、インターネットも、もちろん YouTube もない時代に、そこまで習得できる能力と知識欲が凄い。

熊楠の「細字」は細かすぎ&崩しすぎで、一次資料を読むのは非常に難しく、読めるようになるまでに数年の「修行」が必要らしい(p.164)。
それらを解読して一般読者にも読みやすく紹介してくれるのはありがたい。

共立学校の同級生たちに正岡子規秋山真之夏目漱石。有名な史実だろうが、錚々たる顔ぶれすぎてやばい。

以下ネタバレ

書名になってる、肝心の「未完」のままにした理由については、「終わらないからこそやりがいがあったのでは?」というのが著者の解釈。
結論を出すのが学問の目的ではなく、研究という活動自体が楽しいから、「それが僕には楽しかったから」やっていたのではないかと。