2019/8/4読了。気鋭の文筆家(?)木澤さんによる、『ダークウェブ・アンダーグラウンド』に続く新書。こちらもマスダ先生が絶賛されてたので買ってみた。
ニック・ランドと新反動主義 現代世界を覆う〈ダーク〉な思想 (星海社新書)
- 作者: 木澤佐登志
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2019/05/26
- メディア: 新書
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内容は『ダークウェブ』と重なる部分もあるが、こっちは書名が示すとおり、哲学者ニック・ランドの思想的背景、(新反動主義に繋がる)加速主義、暗黒啓蒙などの思想を概説したもの。ニーチェ、マルクス、ドゥルーズなどの有名人たちの流れを(だいぶ偏った形ではあるが)汲んでることがわかり、ほおお、ポッと出の厨二がイキってるだけじゃなかったのか…と見直した。こいつはちょっと厄介そう。
つっても加速主義って、私にはやはり「人類補完計画待望論」のようなもんにしか見えなかった。ひとことで言うと97年劇場版エヴァの「だからみんな、死んでしまえばいいのに…」である(本書ではエヴァは一切言及されてないが)。「はよ終われ『終わりなき日常』」とでも言うか、実際アメリカでは加速主義が貧困層にそういう受容・需要のされ方してるっぽい。時に、西暦2019年。にこんな懐かしい世紀末的「閉塞感」を見るとは。
p.177
加速主義もまた資本主義リアリズムのもとで生きるための抗鬱剤の一種と捉えることもできるかもしれない
トランプ政権というモンスターも産んだトンデモ有害思想を解剖したる!みたいな動機で研究してるのかとも思ったが、特に否定的なトーンは見受けられない。もちろん心酔するでもなく、価値判断を留保してこの奇妙な現象を考察してるって感じか。ニック・ランドから「表紙デザインにメモ書きを載せる許可を二つ返事で与えて」もらったという点からも、これが敵対的でない日本への紹介であることがわかる。
デザインといえば、この本は目を引く。とにかく黒い、ここ数年のハヤカワPKD本のごとく。しかもカバーのみならず中身も!でメモする余白が少ない。プリンタ使ったら黒インクの減りが気になりそうwスメルズライク厨二スピリット。高二ぐらいなら読めるかな?
この本自体とはほぼ関係ないけど、巻末の「武器としての教養 星海社新書」宣言が鈴原冬二っぽい熱さ。狩猟社に改名しても違和感ない。
そしておなじみ天然チェッカーも発動しました。毎度すいません。(でもわずか1箇所!)
- p.134 陥りざる