武書房

GREEのレビュー機能が終わるので今後はこっちに書きます。

ペスト

2024/3/13 - 4/22 で読了。
コロナ禍初期に買って、例によって数年積んでて、(『ありきたりの狂気の物語』で存在を思い出して)今回やっと読めた。
重厚な大作だがむちゃくちゃ面白く、はたして人間にこんな凄いものが書けるのか…!?と圧倒されっぱなしであった。

悪質な感染症の蔓延という一種の極限状態に置かれた人間たち、それぞれの葛藤や変容。終わりが見えない苦闘の中で疲弊・麻痺していく心身、希望と絶望のせめぎ合いなどの描写がたいへん迫真的。人間に対する洞察の鋭さ・深さと筆力が凄すぎ、古典的名作とされてきたのもうなずけた。1947年の刊か。
そして「ああ、『シーシュポスの神話』の作者か!」と納得した。「でもやるんだよっ」精神。
さらに、同著者の最後の作品が『最初の人間』(残念ながら未完。宮崎嶺雄氏による1969年の解説では『最初の人』となっている)であった、というのもまったく自然な、これ以上ないほど「正しい」ことのように思われるのである。

三島由紀夫の端正な文章に衝撃を受けた時をちょっと思い出した。あっちは原語でこっちは翻訳という違いはあるが。
やたらと長い・複雑な文では中上健次も思い出したがw
大岡昇平『野火』の印象も思い出した。科学技術が未発達な、現代からはある種「野蛮」と見なしてしまいそうな時代においても、人間は十分に繊細で思索的であったのだなという。

しびれたところメモ

多すぎて抜粋するだけでも大変。

  • 7 時間と反省がないままに
    渋すぎやろもう出だしから!w
  • 9 美観もなく、植物もなく、精神もないこの町
  • 24 癤瘡(ねぶと)
  • 27 「最も簡単な言葉で話すくせに、いつも言葉を捜しながらしゃべっているように見えた」グラン
  • 32 一陽来復
  • 35 人づきがよく
  • 36 タルーの説明おもろすぎるぜカミュ兄さん!「愚劣な都市計画などについての好意的な考察」ww
  • 39 艀舟(はしけ)
  • 53 「世論というやつは、神聖なんだ」引用されてそうな台詞
  • 54 ペスト、襲来
  • 55 戦争は「長くは続かないだろう、あまりにもばかげたことだから」と言われる、しかし…
  • 56 人間中心主義者(ヒューマニスト)の陥穽。
    人類の正常性バイアスの話。現代人はもっと学んでいる?
  • 59 もし人間が同時に幸福かつ陰鬱でありうるものなら
  • 64 「一人の人間の個性の伸長に関する何か」w
  • 67 「いいうべくんば」!
  • 76 ペスト会議。論点についての議論、面白い
  • 103 不安を予期して回避しようとする人間の繊細さ。ここで『野火』を思い出した
  • 104 ペスト=嫌なルートに閉じ込めて後悔させる装置 でもあるな。
    こっから妙に「うべな」う多いw
  • 106 みずからの感情を一種熱病めいた客観性をもって考察
  • 109 あり来たりの感動や市販の商品みたいな悲しみや、十把ひとからげの憂鬱
  • 132 同情がむだである場合、人は同情にも疲れてしまう
  • 143 パナルー、雄弁な詭弁
  • 149 「出版屋の連中も事務所では帽子をかぶっていない」w
  • 150 接続詞に悩むグランに共感
  • 153 「この文章を常套的なものに、わずかながらとはいえ、ともかくも近づけている」良い批評w
  • 155 はなはだしい嫌忌をもって
  • 156 形式屋、方式屋、慣例屋
  • 161 愛⇒所有
  • 164 病疫による大きな革命
  • 169 災禍の初めとそれが終ったときとには、人々は常に多少の修辞を行うものだ。第一の場合には、習慣がまだ失われていないのであり、第二の場合には、習慣が早くも回復されているのである
  • 171 「浮世離れのした生活」!
  • 175 《当店では、食器は煮沸済みです》
  • 176 ラヴァリエール・ネクタイ
  • 192 「美しい行為に過大の重要さを認めることは、結局、間接の力強い賛辞を悪にささげることになる」ww
  • 193 最も救いのない悪徳とは、自らすべてを知っていると信じ、そこで自ら人を殺す権利を認めるような無知の、悪徳にほかならぬのである
  • 197 グランの造形も見事と言うよりほかない。
  • 201 仕事は上の空、社会奉仕に精を出し、創作にうつつを抜かす。わかる。Nowhere Man のようでもある
  • 203 「慣例的な言葉」にイライラする現場の医師
  • 229 「アルコール飲料がまだ出されている」当時から「自粛」という概念があったとは!
  • 245 これは誠実さの問題なんです。
  • 249 「それでもまだ俺以上に束縛されている者があるのだ」
  • 255 寂しい埋葬。コロナ禍でも同様であったろう
  • 259 終局的な混交
  • 265 通り過ぎる道のすべてのものを踏みつぶして行く、はてしない足踏み
  • 267 ペストが常態になり無感動になった人々。
  • 273 「罪悪か処罰のようにみのりのない」愛
  • 275 絶望して考えなくなった人々
  • 280 (人情が)毎日また同じことを始めるために役立っていた
  • 282 僥倖は誰の味方でもない
  • 283 「コタールとペストとの関係」。「希望は、疫病。」みたいなもんか
  • 287 身の不ため
    半ズボンのボタン一つなくしたことを嘆き悲しむような彼らの感受性
  • 293 かつて、いっときも時代錯誤でなかったことはないにもかかわらず
  • 307 しかし、自分一人が幸福になるということは、恥ずべきことかもしれないんです
  • 325 このへんカラマーゾフちっく
  • 327 「奇妙な計算を根拠としていた」。ノストラダムス!「その複雑さからあらゆる解釈が許されるような一連の出来事」w
  • 332 操持
  • 335 聾(みみし)いて
  • 336 「道学者」当時知られてたのか。
  • 347 みんなが忘れたいと思っている闖入者
  • 351 ある種の示威
  • 368 最も卑劣な殺人
  • 373 天然のペストから人為的なペストへ。凄い
  • 374 僕はこの頑強な盲目的態度を選んだのだ
  • 387 ある言葉づかいなど、忘れてしまっているものがあったのである
  • 395 福音としての鼠
  • 409 彼女はただ、ふだんよりも少し余計に自分を目立たせぬようにしただけであり
  • 415 人間が意気地なしになるような時刻が、昼夜ともに、必ずあるものだし、自分が恐れるのはそういう時刻だけだ
  • 440 幸福のあらゆる誇らしさと不法さをもって
  • 445 人間を越えて、自分にも想像さえつかぬような何ものかに目を向けていた人々すべてに対しては、答えはついに来なかった。

入門 Python 3

2022/5/1-6/19、9/19、2023/12/19、2024/3/30-4/7 で読了。やっと。
今後ビッグデータとかやるかもしれんし、連休中に流行りの言語マスターしたんねん!と読みはじめ、「8章 データの行き先」まではダーッと行ったが9章からやや失速。それでも11章までは9月に終えてたが、その後「12章 パイソニスタになろう」から再開するまで15か月も空けてしまってた。
んで結局その間使う機会もほぼなく、細かいとこはほとんど忘れてしまったw

約570ページもの大著。しかし内容は詳しく丁寧…ではなく、広く浅く Python でできることをとにかく一通り説明し切る、という方針で書かれている印象を受けた。
それでもこの分量になってしまうというのが恐ろしい。それだけ Python が巨大な開発環境、一大人気プラットフォームに成長したということだろう。まさに大蛇(Anaconda)? Ruby 好きとしてはやや寂しくもある。
しかもこの初版が出たのは8年以上前。いまはもっとライブラリも増えてそうである。

広く浅くと書いたが、いやそれゆえにか、プログラミング初学者には難しいと思う。裏表紙に「プログラミングが初めてという人を対象に書かれた、Pythonの入門書です。」とあるが……いきなりこの本から始めるとわけがわからず挫折するかも?
私はすでに他言語でオブジェクト指向、文字列、正規表現、辞書(ハッシュ)、イテレータ、スライス、クロージャ、ラムダ、スレッド、例外…といったプログラミングにまつわる諸概念を習得しているので、「こんなとき、Python ではどう書くの?」と言語仕様を確認していく作業(そしてその大部分に驚きはない)という感じで、そこは楽だった。新鮮味あったのは「リスト内包表記」ぐらいか、でもこれも syntax sugar であり高級言語がさらに高級化したのねと理解すれば済む。

なので、初学者はこの本で一気に Python プログラミングを習得しようとするのではなく、目の前の課題(練習問題か研修か仕事か)に取り組みつつ、必要に応じて参照する、ぐらいがいいような気がする。まあすごいやる気あって初見の概念も独学できるような頼もしい人なら大丈夫でしょうが。

それにしても、人によっては苦手であろう表紙のいかついアミメニシキヘビの絵も、読み終えてみるとかわいく見えてくるから不思議である。

残念ながら誤記っぽいところ

2015/12/1 初版第1刷、私が持ってるのは 2017/10/3 初版第7刷だが、これは誤記やろ~と思うところがいくつかあったので記録しときます。
(こういうのももう機械学習で検出できるようになってそうだが?)

  • p.364 図11-1 左下の箱は REQ でなく REP では?
  • p.408 エラメッセージ 脱字。
  • p.453 Sumlight API Sunlight の誤字。

その他感想

p.464 0 の階乗が 1 とは知らなんだ! 習ったっけ?

終盤の「付録C 科学におけるPy」に今日やっと到達したら、最近勉強してるとよく出てくる NumPy、SciKit、Pandas などが総登場してきて、ちょっと伏線が繋がったような嬉しさがあった。

ネコの手も貸したい

Twitter で見かけて面白そうと思って 2018/9/1 に買ったが、長年積んでしまってた。
2024/1/16 - 3/24 家でゆっくり読了。(I Will Survive の手前でまた2か月ほど寝かしてた)

面白かった。リットーミュージック発行というのも「教則本」ぽくていい。

私は「職業作詞家」を目指したことはなく、今後なる可能性もほぼ 0 だろう。自分には縁遠い世界の話なので気楽に読める…のだが、(あまり)知らない曲の解説だと一応どんな曲か知っとかねば、と聞いてから読むのでけっこう時間かかった。(とはいえ YouTube がある現代はありがたい)

漢字やカナの使い分け、譜割りの考え方はなるほどーという感じだが、まあ想定内。しかし歌手の特性に合わせた歌いやすさや、響きの強弱も考慮して母音・子音を選ぶというところはさすがプロ!と感心した。
私も売文家…ではないけど、自分が書く文章には人一倍(どころかほぼ病的に)こだわってしまう性癖がある。単なる仕事上の連絡メールでも、言葉選び、語順、改行や句読点の位置とかでゴニョゴニョ悩んでしまうことが少なくない。ほとんど誰からも理解も評価もされない悪癖に近いものであろうが、「言葉にこだわってええんや!」という(錯覚かもしれない)励ましを得られた気がする。

やしきたかじん「東京」は、もともとは畠田理恵さんが歌う予定だった(p.67)というのがびっくり。こういう業界驚きネタもこの本にはいっぱい出てくる。

残酷な天使のテーゼ」の歌詞は作品をろくに知らない状態で作った、という有名なエピソードは知ってたが、及川さんが作詞することになったのも高橋洋子さんが歌うことになったのも「偶然」、というのがすごい。そこから歴史的な名曲が生まれたというのが。

巻末の「及川眠子 全作品リスト」の量に圧倒される。2018年6月時点で、舞台やCM向けのも合わせると千曲以上!
というか「いっとうしょうたいそう」も及川さん作詞やったとは。我々はみんな眠子さんの歌詞を聴いて育った、と言えるかもしれない。

見つけてしまった衍字?

p.61 しまったりすれば かな。

ありきたりの狂気の物語

2024/2/8 - 3/14、広電内でチマチマ読了。
なかなか面白かった。

平成11(1999)年8月1日発行、裏表紙にブックオフの400円シールが貼られてる。いつどこで買ったかは覚えてない。2000年前後に流行ってたと思うので学生時代か就職後か? いずれにせよ20年ほど前ではないか。
買ったものの、いかにもパンクアイコン的というか(Trainspotting も流行ってたな)不良っぽいものに憧れる若者が好きそう…という印象で特に読む必要性を感じず、ずっと積んでしまってた。漱石も実はめっちゃロックやんけ!ということに25歳で気付いてしまったというのもあったか。

それがこのたびついに読んでみて。攻撃的な中島らもというか、アル中(6缶入りビールが頻出アイテムw)の露悪的なおっさん、という感じでわりと予想通りであった。顧みない対象としての妻子を持ってるという意味においても正しく無頼派というか。90年代日本で流行った「悪趣味系」との相性もよかったと思われる。

いかにもパンクロックな作風で、ディオゲネス的「下から目線」(それが内発的なものか人工的な芸風か、その両方かもしれない)は嫌いではないと思った。私もそうなので。
ただ女性蔑視がきついので現代では受け入れられがたいとも思う。平気で飲酒運転するし。

「ありきたりの狂気」に込められた主張としては、現代のアメリカはどいつもこいつも狂ってる、自分も含めたアル中もギャンブラーも真面目にあくせく働いてる奴らも。というぐらいの意味か。

読んでためになる本ではないし、心が温まるとか誰かと熱く語りたくなるような本でもない。いま読む「必要性」はまったくないと言える。
ただ時々「おお、さすが詩人」と思わせるような光る言葉が出てくることもある。泥に咲く花のような。
あと「こんなどうしようもない奴でも堂々と生きてるんやしな」という、ある種の救済のようなものは感じられるかもしれない。ブコウスキーと友達になれるかはわからんけどw

例によって覚え書き

  • 16 動物たちは「どんなときでも自分自身なの」
  • 22 「みんな自分自身にうんざりして、死を願ってる」は人類の常態か?
  • 33 いい展開
  • 41 ピンハネを糾弾
  • 111 「作家のほうがおまえを選ぶんだ。おまえが選ぶんじゃない」
  • 118 女性蔑視がすごい。ネタか?
  • 133 禅の結婚式の「ふざけた味付け」w
  • 134 FBI捜査官w
  • 147 「悪かったな、一瞬忘れてたよ」w
  • 166 時間を、人を邪魔する以外にはつかいようがないという、何十億もの人間
  • 175 纏足二つぶんぐらいまで迫ってきた
  • 178 古臭くてあくびが出るほど退屈な言葉「死の願望」
  • 181 「詩人というものは不平不満を注意深くいってるだけ」w
  • 232 「一人暮らしで台所がいつもきれいでいたら、九人のうち八人は浅ましい性根の男である」w
  • 258 クズどものせめぎ合い、すげー面白い
  • 281 「それともピュリッツァー賞のほう?」w
  • 290 どんなラビになるかは知れている
  • 295 「おれは鳥が水浴びできるような場所があればいいよ」美しい表明。
  • 297 「一センチ進むのに、どれだけ多くの人間が死ななきゃいけないんだ?」ここの会話いい。
  • 300 充実した48歳! 羨ましい。
  • 327 「えっ一九七五年?…なんだ一九八四年はもうすぐじゃないか」
  • 357 (ボビーのちょっとした癖、)彼はそうしなければならない
  • 360 プーロンの態度w
  • 362 ドクター・ブレイジンガムのクズ描写w
  • 377 なんとかやれそう
  • 382 仕事で疲れ切ってるところに自作の詩を読めと言ってくる女性w
  • 389 「ソースパン」という架空アイテム
  • 396 ノーマン・メイラーを読む人たちや、野球を見にいく人たち…が怖い
  • 401 悲惨な事故現場を撮影する人々。スマフォなんてなかった昔からそうか
  • 407 おかしな奴=ペストが「かならず私に目をつける」w 共感。
  • 411 マックリントックw
  • 417 自由な魂はありふれているわけではないが、会えばわかるものだ…わかる
  • 430 「糞いまいましいグッゲンハイム助成金の申込み用紙を手に入れたかったらどこにいけばいいかを知ってる連中」
  • 433 「バタ屋のサム」
    「ミニスカートの女の値打ちは八ドルそこそこだ」w
  • 434 「(金持ちは)何にも関心がなく、ただ金だけを持っている。あわれな動物ではないか」透徹してるようでもあるが、ただの僻みでもあるな
  • 439 「さよう」ww
  • 441 「孤独癖が強くて一人で飲むのが好きな、年とった飲んだくれ」俺か!
  • 443 若者言葉への苛立ちがおもろいw
  • 446 (老人は若者に)「嫉妬してるのだ」
  • 451 「こいつらがこんなにハンパで生きていけるなら、私だって生きていけると思える」w
  • 452 彼女は目を明けていた ← 誤変換?
  • 463 最後の短編「毛布」は趣向違って良い。幻想的で。
  • 464~ あとがき
  • 467 (日本語と)英語とのあいだに、無傷でいったりきたりできる通路などない
  • 471 (小説とは)「こんなんでいいのである」!

訴訟王エジソンの標的

2019/6/22 購入、2024/1/26 - 2/18 で読了。おもに広電内で。
500ページ以上あるのにほぼ全ページが面白いという驚異の書。映画的名場面、どんでん返しがありすぎる。

なんで買ったのかは覚えてない。丸善のハヤカワ棚でなんとなく惹かれたから?
しかし訳者あとがきで著者は『イミテーション・ゲーム』の脚本家であったと知り、深く納得した。そら面白いわけやで。

原題は THE LAST DAYS OF NIGHT。それでは伝わらんであろうということで「発明王」をもじった「訴訟王」にしたものと思われる。たしかに『夜の最後の日々』では何の話かわからんか。
実際、対ウェスティングハウスだけでも300件超も訴訟を起こしてたらしいので、訴訟王というのも誇張ではない、どころか歴然とした史実であった。エジソンは「えらい人」そんなの常識、と素朴に思ってた私にとっては驚きだった。そこまでアクが強い、香具師っぽさも持った人物であったとは。
そして発明する仕組みを作った、いわば「メタ発明」もした人であったことも知った。

史実を題材にしており、登場人物はほぼ全員が実在した人物である。
しかしここまで劇的な展開ってあるのか…事実は小説より奇なりとは言うが?!と思ったらやはり編集、脚色したものだった。なので厳密な意味でのノンフィクションではない。
そのネタバラシというか解説は巻末の著者注で誠実に明かされる。

先日知った↓ファラデーの恩師デイヴィーも出てきて(p.56)嬉しくなった。 takeshobo.hatenablog.com

名言たち

各章(72章もある!)の冒頭に科学のいわゆる偉人たちの「名言」が引用されており、これらもいちいち面白い。
(以下、行頭の数字はページ数)

  • 11 スティーブがテクノロジーに疎いのがわからないのか? 彼は売るのが恐ろしくうまいだけだ……。エンジニアリングについて何も知らないし、言うことと考えることの九十九パーセントはまちがっている。――ビル・ゲイツ
    言いすぎww
  • 55 わたしは失敗したのではない。うまくいかない方法を一万通り見つけただけだ。――トーマス・エジソン
  • 112 満足しきった者がいたら、それが失敗者だ。――トーマス・エジソン
  • 191 ひとりになれ――それが発明の極意だ。ひとりのとき、アイディアは生まれる。――ニコラ・テスラ
  • 233 何をすべきでないかを判断するのは、何をすべきかを判断するのに劣らず重要だ。――スティーブ・ジョブズ
    これ有名なやつやね。
  • 255 イノベーションが生まれるのは、廊下で立ち話をしたり、夜の十時半に新しいアイディアについて電話で話し合ったりする人々がいるからだ。(後略)――スティーブ・ジョブズ
  • 260 自分の軍隊を持てないようでは金持ちとは言えない。――マルクスクラッスス
  • 357 革新をおこなうと、まちがえることもある。いちばんいいのは、そのまちがいをすぐに認めて別の革新に乗り出すことだ。――スティーブ・ジョブズ
    エジソンと同じこと言ってる。
  • 371 まずゲームのルールを学びなさい。そのうえで、だれよりも上手にゲームをしなさい。――アルベルト・アインシュタイン
  • 388 科学の核心は、一見相反するふたつの姿勢のバランスを取るところにある。(後略)――カール・セーガン
  • 392 わたしたちが経験しうる最も美しいものは神秘である……この感情がわからない者、立ち止まって不思議に思ったり畏敬の念に打たれたりしない者は、もはや死んでいるも同然だ。――アルベルト・アインシュタイン
  • 403 わたしのモットーのひとつ、それは集中と単純さだ。(後略)――スティーブ・ジョブズ
  • 492 すべての可能性が尽きたときには、こう思うがいい――まだいける、と。――トーマス・エジソン
  • 423 人は先を見通して点をつなげることはできない。後ろを振り返ってつなげるだけだ。だから、将来その点がなんらかの形でつながることを、人は信じるしかない。(後略)――スティーブ・ジョブズ
  • 521 わたしのビジネスの手本はビートルズだ。(後略)――スティーブ・ジョブズ

それにしても本家テスラの愛されっぷりよ。セルビア出身で非常に長身やったそうな。

覚え書き

うまみがありすぎる小説であった。読書中のメモをダーッと挙げとこう:

  • 17 物語化が心を守る
  • 21 「どんな人間がそんなことをできるっていうんですか」「金持ちさ」
  • 52 「糞こそトーマス・エジソンが発明した物だ」w
  • 57 「穏やかで揺るぎない光を作ることなどできるわけがない」と思われていた
  • 62 技術革新を抑圧するのは悪
  • 64 不器用な嘘つきは正直者とあまり変わらない
  • 72 「これがトーマスのやり方です。“正しい答えは何か”ではありません。“まちがってない答えが見つかるまで全部にあたれ”です」
  • 76 とてもゆっくり負けることは、勝つこととほぼ同じだ
  • 92 電気エネルギーがどこから来るのかは“だれも知らない”
  • 101 パンのどちら側にバターがついているのか
  • 103 テスラ「わたしが摂取できるのは、体積の合計が三の倍数になる食べ物だけです」www
  • 107 「EGEの研究所は、発明を育てるところではありません。退屈を育てるところです」
  • 108 最高の復讐は成功
  • 110 金に頓着しない人間にはふた通りある
  • 112 1836年に世界初の特許庁が置かれた
  • 120 そうではなく、まったく仕事をしていなかった点が評価されていた
  • 125 テスラの食事は「水と塩味のクラッカーのみ」!
  • 126 ウェスティングハウスアメリカで最初に「週休1日」を導入
  • 139 「おまえの名声を愛する女を愛してはだめだ。無名の男として愛してくれる女がいい」
  • 139 「父から恋愛指南を受けるのは、ロックフェラー二世から金のやり繰りを教わるようなものだ」ww
  • 186 人間ポールとテスラの連帯感がエモい
  • 186 「アルコーブ」という構造を知った。
  • 215 「朝のコカインはすでに断っていたが」当時は処方されてたのか。
  • 249 デマンス・プレコス、早発性認知症
  • 256 トロイ戦争のヘレネ
  • 258 この男たちの天賦の才はみずから働くことではなく、みずから作った体制を効率よく働かせることに発揮された
  • 261 アメリカ合衆国には反知性主義の傾向があった
  • 282 「スティーブ・ジョブズパブロ・ピカソの名言に対するあやまった解釈」w
  • 326 ポールの子供時代、ほんとうに必要なものはだれでも持っていたが、ただ欲しいだけのものはだれも持っていなかったものだ
  • 333 ここからの展開が恐ろしく面白い。
  • 341 嘘は正しい挑戦を可能にしただけだ
  • 347 アグネスの洞察、人を見る目。すばらしい!
  • 351 「ニューヨークでは、弁護士の開業にはどんな試験もいらない」すごいな19世紀
  • 352 「最初の子を売らせる」? ちょっと意味がわからない
  • 398 父親は綿摘みに明け暮れたが息子は電力を操れる、そんなアメリカに住みたい
  • 401 問題にぶち当たったとき、ミスター・テスラは真っ先にそれを分類させる
  • 402 電話!!
  • 405 アリス・ブーンとピーター・シェルドンww
  • 406 ベルの妻はメイベル!「佐倉桜子」みたい
  • 408 『結婚なんてつまらない』を歌ったw
  • 413 それが勝利だよ
  • 464 「きっと<サリーおばさんの電気店>あたりにするんでしょうが」ww
  • 493 「会衆」という言葉を学んだ。
  • 494 勝ち目があるのはいつでもヘンリー・ジェインのような人間だ
  • 517 高級レストラン<デルモニコス>にテスラ専用席があった!
  • 526 「フォードは事業計画なんてものを持っている」
  • 545 謝辞も具体的ですごい。

合格対策Microsoft認定AZ-900:Microsoft Azure Fundamentalsテキスト&問題集 第2版

2024/1/31購入、2/6-8で読了、2/10合格。

言い訳および経緯

こういう資格ビジネスというか搾取商法みたいなのに加担する気はなかった。
奴隷が自分を繋ぐ鎖を自分で買ってせっせと磨くような倒錯に見えて、こういうのを「勉強」とは見なしたくなかった。
受験料も高いし、「持ってるほうが恥ずかしい資格」ぐらいに思っていた。神聖IPA帝国民としては。

しかし諸事情により、取ることにした。詳細を書くといろいろアレなので割愛する。

その心理的抵抗、屈辱感を乗り越えるのが最大の難所で、始めてしまえばいわゆる作業ゲー。勉強も受験も(この記事を書くのも)。

本の内容について

これともう1冊SBクリエイティブから出てる本が試験対策として人気みたいだが、こっちのほうが100ページほど少ないのでこっちにした。本は紙で読みたいけど森林資源も守りたいので。

ページ少ないだけに説明はあっさり、でもそれで十分。物足りないところはネットで調べればいい。
それでも多少考えたり復習したりもするので、一通りやるのにざっくり7時間ほどかかったか。

「可用性セット」、障害ドメイン/更新ドメインの説明は正直いくら読んでもピンと来ず。
この記事↓はかなりわかりやすかった(が、本では同じことを説明してるように思えなかった)。
更新ドメインと障害ドメイン。それと可用性セットについてのまとめ | SIOS Tech. Lab

勉強の仕方について

こういう本で一通り要点を理解して、あとはMS公式模試↓で余裕で90%以上取れるようにする、が最速と思う。
試験 AZ-900: Microsoft Azure Fundamentals - Certifications | Microsoft Learn
この模試は(意外にも)よくできてる。
ただ、本番ではちょっと仕組みが違う問題もあった。当てはまる単語を左から右にD&Dするとか、選択肢を表示するためスクロールが必要なやつもあったな。

「意外にも」と書いたのは、公式の Microsoft Learn の教材が膨大かつ茫漠としてて、試験対策には向いてなすぎたから。
初めは本も買いたくなくて公式記事をチマチマ読んでたのだが、どんだけ読んでも理解度が上がってるように思えず、本読んだほうが早いわと気付いた。

受験

2/9に翌日の試験を予約した。会場は東急ハンズ&サロンシネマのすぐ近く、これは便利w
試験センターに早めに入ってお姉さんから説明聞いて、実質20分ほどで完答。念入りに見直しても30分かからず。
当然合格したが、悔しいことに満点でなく936点。理解が薄いとこは間違えてたようだ。

2018年まで受けてたIPA試験よりハードルは何十倍も低い。いつでも・すぐ受けられ、結果もすぐわかる。
なので張り合いはないが、まあこういう楽な試験もゲーム感覚かつちょっと「スキルアップ感」は得られていいのかもねと思った。

試験でたぶん間違えたやつ

  • 「規制コンプライアンス」を評価できるのは Microsoft Defender for Cloud
    Azure Advisor にもセキュリティの勧告機能あるよな…て引きずられてしまった。
  • Application Insights でアプリの応答時間を見られる
    いや使ったことあるのに、「アプリでログを明示的に出してない限り無理、ていう引っ掛けでは?」とか迷走、謎の "Network Watcher" を選んでしまったw

思わぬ副作用

本読んで合格して Azure の概要をある程度知ったことで、今後「○○を△△したいなら、Azure の□□機能を使えばいいですよ」みたいな提案をできる可能性が出てきたかもしれない。
まさか実用性があるとは!

ロウソクの科学

2020/3/15 に購入、2020/1/15-29 で読了。

おそらく60年以上前、父が中学の時に先生から薦められて街の本屋(実家は本屋などない村である)でこれを買って読んで感銘を受けた、という話を聞いてからいつか読まねばと思っていた、歴史的名著をついに。
↓これの約130年前のクリスマス講演の実況本。 takeshobo.hatenablog.com

ただ、やはり実演を見てないとつらいなw
理解の助けになるように図も追加してくださってるけど、白黒のイラストなので今イチ様子がわからん絵もある。当時の時代背景も訳注に補足するなどの工夫もされているのだが。
あと「既知の結論を裏付けるための実験の羅列」という感じもあり、あんまり発見&納得感はないかもw まあ限られた時間内で実演する必要があったのでそれはやむなしか。

講演自体もさることながら、巻末付録の「ファラデー 人と生涯」も感動的。科学(化学)を愛し/に愛された人であったことがよくわかる。

覚え書き

  • p.92 「私は、この実験を皆さんにお見せするのをちっとも恐れていません」現代ならアホ親が抗議しよるかもな。
  • p.96 重さの最小単位「1グレーン!」
  • p.102 「電報を送ってくれました」いまで言うLINEみたいなもんか。
  • p.107 コック(H・H・H)って、図に「'」とかない?
  • p.115 hundred-weight こんな単位もあるのか
  • p.127 窒素の偉さ。
  • p.133 「ぼうこう膜」!
  • p.140 もはや単に「ぼうこう」
  • p.151 ここでも和ロウが登場。開国の数年後やから不思議ではないのか
  • p.165 「悪い空気」w
  • p.170 「私たち自身がロウソクのようなもの」。ここから一気に感動的になる
  • p.199 環境問題に関心を持っていた
  • p.204 Encyclopedia Britannica を読み耽って電気を勉強。熱い
  • p.211 「おそらくフッ素のために健康を害し」デイヴィーも若めに亡くなってる。科学が人類に曇りなき希望を与えてた時代だったのだろう。
  • p.212 幸運なファラデー。敵国の科学者を厚遇するナポレオンもすげえ!
  • p.219 恩師デイヴィーとの確執。なんて「人間ファラデー」っぽい
  • p.230 「私の人生は楽しいものであり、望みうる最上のものだと思っています」まさに。
    そう言える人生にしたい。