武書房

GREEのレビュー機能が終わるので今後はこっちに書きます。

トータル・リコール ディック短篇傑作選

2023/8/20 - 9/10 で読了。
有名な映画『トータル・リコール』『マイノリティ・リポート』原作、その他短篇が計10篇収録されてる。
十~二十代のころはほとんど映画鑑賞の習慣がなかったので私はどちらも未見なのだが。

めっちゃ面白かった。ディックは短篇の名手でもあったのか!と気付かされた。

以下、ちょろっと感想集

トータル・リコール We Can Remember It for You Wholesale

面白すぎた。さすが映画化されただけある。
後半の展開は予想できるかも?

  • 原題に Recall 入ってないやん! 映画向けに付けた題か。
    ただ前者は wholesale の、後者は recall の多義性を利用してそう。
  • 「リコール株式会社」受付係どうなってんねんw
残念ながら誤記もあり
  • p.16 当人でもくらいに驚く

出口はどこかの入口 The Exit Door Leads In

1979年の作。なのでさすがにコンピュータ観は牧歌的だが、「仕組まれ感」が心地よい。

地球防衛軍 The Defenders

1953年の作(70年前!)。
夫婦間の衝突は原発事故後の分断を思わせる。
途中からオチはわりと想像つくけど、AIがこれだけ実用化されつつある現代においては「今そこにある問題」を描いてるとも言える。

訪問者 Planet for Transients

  • 全員英語が通じるのはまあご愛嬌
  • 衣装「鉛で裏打ち」されすぎw

世界球 The Trouble with Bubbles

1953年の作。

  • p.199 OOPARTS 感あるやりとり!
    「人間本来の破壊衝動(…)」 「そんなものは存在しない(…)牙のペーパーナイフをつくりたいという本能的な欲望が存在しないのとおなじように」

ミスター・スペースシップ Mr. Spaceship

これも1953年の作。

  • p.233 「あれはたいした男ではないな」w
  • p.242 「技術わかってない人による仕様変更の扱い」が現代と一緒w
  • p.272 「いかなる社会的な慣習も、生来のものではない」

非O Null-O

object-oriented のOっぽいが、プログラミングの話ではない(1958年にそういう概念があったのだろうか?)。
ドラスティックというか原理主義的で「非・非O」な人類には悲惨すぎる話だが、テンポ早くコメディのように進む。

マイノリティ・リポート The Minority Report

直訳すると「少数報告」。3人の「プレコグ」を使った犯罪予知システムというのが新しいのか古いのかわからんけど、「MAGIシステム」の原型みたいな感じか。
過去と未来との干渉・せめぎ合いが面白く、「未来からのホットライン」とはまた違った仕様の時間SF。すごい。