未読PKDがまだ家にあった!ことに気付いて読みはじめ、2023/6/12-25 おもに広電で読了。
まず「読みやすさ」に驚いた。おそらく初めて読む山田和子さんの訳のおかげなのか?そして「一見平穏な日常にしみ出すかすかな違和感」みたいな導入の描写が鮮やかで、純粋に小説として面白い!と感動した(経典として我慢して読むというのではなく)。
この「周りの世界は実は全部作り物で、みんなが俺を騙してるのではないか?」ていうのはわりと思春期に普遍的な妄想でもあり、有名どころでは伊集院光さんなんかも言ってたと思うが、それがどうも妄想でなく実際おかしいぞ…と判明していく流れが小気味よく、「敵」は何者なのか?!と期待させる。
逆に真相が明らかになってからの展開は目まぐるしく、そこまで世界を広げるか!という疾走感というかディックらしい?強引さがある。
結局<火星人はどこへ?>コンテストの設計とか、ヒントにどういう意味があるのかとかようわからんしw
ともかく、予想できない展開に引き込まれ、面白かった。
全体的にフロイトの引用が多く、ハイゼンベルクへの言及もあり、「SF」を書こうとしてる意図が感じられる。
覚え書き
- p.25 CMの音でかい問題は昔からあったのね。でもそういう理由?
- p.27 「どちらも何も意味していない」定型あいさつ文に対する厭悪。
- p.74 魔夜峰央先生が描いてたFCゲーム『エリュシオン』を思い出した
- p.75 「無意味な人生」身につまされるディック節!
- p.158 「書き割り」の描写が面白い
- p.171 「ほかの大人たちはみな、定職と妻と自分の家を持っているのに」身につまされるディック節2!
- p.197 アメリカは左ハンドル右側通行と思うが、車線の位置関係が正直よくわからなかった。左が追い越し車線じゃないの?
- p.242 ドラパパパパパ音!w
- p.265 サリヴァン、ホーナイ、メニンガー
- p.273 「あの方向」w
- p.341 原書が出版されたのは1959年。スプートニク後、アポロ前。まだ戦争の影響も色濃く感じる。
- p.371 「理想主義的な戦争」。拡張への欲求を肯定するか否か。
- p.381 (本編ではなく解説だが)Order が Oder になってる