武書房

GREEのレビュー機能が終わるので今後はこっちに書きます。

黄色い家

2023/5/4 - 6/15 で読了。
こんなん泣くがな!!!

発売日(?)前の2/19に買ってたが、読みはじめたら止まらんやろと危惧して積んでたのだった。
5月の連休中についに読みはじめ、その後もなんやかや忙しくて置いてた。最近やっと余裕ができてきて、後半は一気に。

さすが、凄かった。
主人公の伊藤花はたぶん1980年生まれで私と同い年。9歳の時に『魔女の宅急便』やってて、ノストラダムスに怯えてて、ルーズソックス、「女子高生」、「トラウマ」が流行ってた(p.168)90年代のこともよく覚えてる。
それだけに、他人事ではない…いや性別も住所も家庭環境も違いすぎるしかつ小説なので他人事に決まってるのだが、それでも。私がいたのと同じ時代・世界を花も生きてきたのだという実感を持てる。
(本筋じゃないけど川上さん、宮台かぶれみたいな痛い奴の描写が相変わらず巧いw)

恐ろしい話であった。「あの日狂い出した歯車」みたいな出来事の積み重ねで、人生の道筋は大きく歪められ、想像もつかなかった地点まで流されてしまい得る。ライ麦畑の捕まえ手がいなければ。
多くの犯罪者と言われる人々の人生はそうなのだろう。「あの日のあれさえなかったら」という。
風水や夢判断にすがってしまう精神状態というのもわかる。極限、限界というやつ。人によってはそんなとき新興宗教に行ってしまうし。

川上さんの小説にしては珍しく?関西弁は抑えめ。普遍的な物語にするため土着性を控えた?
でも「アンメルツヨコヨコ」といった特定世代向けの箸休めはあるw


私は花から見たら完全に「持ってる」側の人間なので、安直に「わかる」などと言うのは厚かま(痴がま)しいのだが、でもある程度はわかる気がするのだ。
一部の人間は生まれつき・何の努力も苦労もせず持ってるものが自分にはなくて、それは決して(この人生では)得られないものだと知ったときの、妬みというか怒りのような感情・感覚が。
白人と黒人、富裕層と貧困層のような分断はわかりやすいけど、もっと観測も問題視もされてない差異もあるしな。

それにしても。川上さんのように高度な知性を持つ人が、いわゆる知的でない人たちをこんなにも精密に、おそらく感情移入もして描けるというのが凄いと思った。
どんなに売れっ子に、立派になっても、絶対に「弱い」人の側に立ち、empower できる人でありたいですね我々も。


いつか映画化される気はするけど、現場の熱量が大変なことになりそう。

ともかく、これでネタバレを恐れる必要がなくなった!
そして、読むとかなりしんどいけど、やっぱりめちゃくちゃ面白かった!!