武書房

GREEのレビュー機能が終わるので今後はこっちに書きます。

死の鳥

2023/7/16-8/19 おもに広電でちびちび読了。

圧倒的ハイテンションな文体に痺れた。面白かった。

宮部みゆきさんが『虐殺器官』の帯に「3回生まれ変わってもこんなにすごいものは書けない」と書いてたけど、まさにそんな感じ。
自分が作家ならこの才能に戦慄して筆を折りたくなるのでは…と架空の心配をしてしまうほど。

フォントや改行位置で遊んだり、ベスターっぽい手法も多用されてる。(と思ったら「ジェフティは五つ」に『分解された男』も出てくる!)
トリッキーな構成の作品が多く、とにかく異常にカッコよく、「そらエヴァにも影響するわ」と思った。

感想ぽろぽろ

  • 「悔い改めよ、ハーレクィン!」とチクタクマンはいった
    p.11 「思考が形式、儀礼、上品さ、作法などの従属物になりさがっている階層」辛辣さ、悪意の卓越性がすごいw

  • 竜討つものにまぼろし
    p.50~ 超現実描写の畳みかけが凄い。「“人間”という語以外のすべてである生き物」!

  • おれには口がない、それでもおれは叫ぶ
    悪意の神に囚われて嫌がらせされ続ける。絶望感がすごい。

    • Nimdok って mnemonic っぽい
    • 「パンチカード」をASCII文字列と見なして解読を試みたが、たぶん意味ない飾りっぽい。
      (左をMSBとすると V 6 SUB CAN …、右をMSBとすると j l X CAN …、どっちも意味をなさない)
  • 世界の縁にたつ都市をさまよう者
    露悪的でえげつない。悪趣味系?
    通勤電車で読んでると、日常に戻れるか不安になるほど狂ってる。すげえ

  • 死の鳥
    日本でおそらく一番有名なエリスンの短編「世界の中心で愛を叫んだけもの」で感じた、硬質で冷たい世界観が健在。

    • p.195 「アーブー」でこないだ映画観た『少年と犬』が出てくる!
  • 鞭打たれた犬たちのうめき
    これも酷い話。

    • p.242 固有名詞多い。ラバノーテイション、ユーリズミックスなどを学んだ。
    • p.252 こっからの流れの詩情がすごい
  • ランゲルハンス島沖を漂流中
    個人的にはこれが一番好きかもしれない。冒頭からの狂いっぷりの密度がすごい、YOASOBI の楽曲のように。

    • p.274 狡知にたけた古狸
  • ジェフティは五つ
    まぎれもないSFで、面白いししんみりもさせられる。
    両親の感情に対する洞察がすごい。

  • ソフト・モンキー
    bag lady という言葉を知った。アメリカでも同じなのか。