武書房

GREEのレビュー機能が終わるので今後はこっちに書きます。

ホット・ゾーン

2021/6/27読了。5/2から一気に一部二部を読み、連休明けから多忙のためしばらく積んでたが、やっと再開できた。

冒頭「本書への賛辞」で、スティーヴン・キングアーサー・C・クラークといった神々が口を揃えて「今まで読んだなかで最も恐ろしい本」のように述べてるのでビビりつつ読んだ。
たしかにめっちゃ怖かった。人間を「あらゆる穴から」「大出血」させ「崩壊」させる、まさにゾンビに変えてしまうような恐怖の病気。(というかゾンビ描写がこういった感染症から着想を得てるのかもしれない)
幽霊や「怖い上司」なんかよりももっと即物的に、肉体的に怖い。

岩田健太郎先生の解説(2020/4/15)でエボラのその後の推移がわかり、「医学の進歩」のありがたさを感じる。(その後コンゴでは複数回、流行終息が宣言されたようだ)
もちろんその時点ですでに COVID-19 が「パンデミック」になっていたのだが。

端的なサブタイトルがいちいちかっこいい。探索、第一の天使、第二の天使、指揮系統、嘔吐、91-タンゴなど。
「黙示録」の引用がこれほどはまる本もないのでは。

高見浩さんの訳も硬派で端正ですばらしい。誤字脱字は p.233「ことがる」しか見つからなかった。
(p.198「中央アメリカ」はアフリカでは?と最初思ったが、熱帯雨林アメリカにもあるな)
あと p.337 で "Racal suit" を知った。

綿密な取材に基づくノンフィクションでありながら、風景や心情、動作の描写は臨場感に溢れ、上質な小説を読んでいるかのような読書体験をもたらす。不謹慎ながらむちゃくちゃ面白く、ぐんぐん読めてしまう。
筆者リチャード・プレストンが「追記」に書いている以下のような人間への敬意が、作品に深さと強さを与えているのだろう。

一つの生物種としての人間は書かれるべき存在だし、どの人間の人生も語るに値する物語だ。