武書房

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太陽の季節

石原慎太郎。といえば、俺ら30代ぐらいの世代には

老害、マッチョ、ドチンポ野郎、レイシスト、新東京銀行中原昌也氏がボロカス書いてた、

といったネガティヴな印象が強いのではないか?

なんか昔は太陽族なんて流行もあったみたいやけど。都民がなんでそんなに何回も選ぶのか不思議、アホなの?ぐらいに思ってた。

 

しかし、西田藍さん(女神)がお書きになったこの記事を読んで

honcierge.jp

目から鱗というか、ああ彼は人気作家だったのだ(だからこそ芥川賞の選考委員もしてたのだろう*1)、大人たちから恐れられる不遜な若者だったのだ、という当たり前の事実に気づかされた。

作品と人物は別! 食わず嫌いはいかんよ!

 

てことで読んでみました。印税的な理由で図書館で借りて、2016/7/10読了。

太陽の季節 (新潮文庫)

太陽の季節 (新潮文庫)

 

まー酷いw。こら嫌われるわ。

金持ちのクソガキどもが特に悪意も思い入れもなく好き放題やって自滅する話が多い。戦後たった10年でもそんな階級がいたのかということにも驚く。「恐るべきボンボンたち」ちゅう感じ。と思ったら「灰色の教室」冒頭で『怖るべき子供たち』が引用されてたりするので、意識的にそういうのを描きたかったのか。

 

ミソジニーというより、女性をほぼ物として扱ってるような鬼畜男ばかり出てきて、笑っちまうほどだがやはり笑えない。当時の女性は立場弱くてかわいそうやなと思った、避妊も普及してないみたいやし。

大半の話の主人公が「気取った女を、暴力で征服した挙句破滅させる、不敵な男」。もうこの作者病気やろw。いや、「俺はこういう奴だ!」なのか「こういう意識低い奴らの世界を描いたんだ!」なのかはわからんが。両者は混ざってる気もするな。

今なら(今でも?)即炎上→社会的に抹殺されそうな案件ばっかり。ナンパした女子2人のビールに睡眠薬入れて拉致とか。60年前も野蛮やったのね日本。

しかしこの人を知事に選ぶとは、都民、懐広いんかな…とか思ってしまう。 

有名な障子シーンは今読むとむしろ牧歌的なほど。村上龍さんの方がよっぽど露悪的なこと書いてるで! 勝新の米俵に比べたら遥かにソフトモードやし!とも思う。

 

ただやはり、作家としては巧いと思う。二十歳そこらで既に独特の文体を持ってるし、ぐんぐん読ませる、「やるな~」と思う。文庫の解説で奥野健男さんが「こいつぁムカつくけど確かにすごい、新しい、今後に超期待!!」みたいに書いてるのもわかるな。

*1:『乳と卵』くさしてた時はむかついた