武書房

GREEのレビュー機能が終わるので今後はこっちに書きます。

母の記憶に

2019/11/24読了。6月に買ってしばらく積んでたけど、是枝監督『真実』に出てきたのそういやこれやなと読みはじめた。

ケン・リュウの神がかった才能を見せつけられる圧倒的な短篇集であった。「世界最重要作家」というのは言いすぎかもだが、他の作品も必読と見なさざるを得ない。

母の記憶に (ケン・リュウ短篇傑作集3)

母の記憶に (ケン・リュウ短篇傑作集3)

 

帯には「○城ティナさん推薦!」とあり、ワタシ的には西田藍さん推薦のほうが1万倍訴求するのだが…などという邪念は置いといて。

母の記憶に

短篇SF映画の原作として書かれたものらしい。数年に1回しか地球に戻ってこられず年を取らない母…という奇想天外なショートショートだが、普遍的な母娘愛というテーマもあり、しんみりする。

In the Loop
おそろしく素晴らしい短篇。圧巻や。
"Don't be evil" がない世界。IT技術者も必読。学習アルゴリズムは「知能」ではない。
状態変化

これもすっごいええ。なんちゅう奇想(元ネタはあるらしいが)。個人的幼年期の終わり

「人生はすべて実験」たぶんわかる。

The Perfect Match

バカうま。「マッチそっちか!」と。凡庸な監視社会批判をひねってあるのが面白い。「ティリー」は Siri から取ったんかなやっぱ。
幹遥子さんの訳もいい。virtual をちゃんと「実質上の」と訳してる気がする。

Staying Behind

意識をクラウドにアップロードして永遠の生を…という擬似宗教?が浸透した時代の話。近い未来のリアルな予言のよう。「核戦争後じゃないけどテクノロジーの成り行きで」終末の風景が、陰鬱だがちょっと懐かしさもある。

上級読者のための比較認知科学絵本

なんのこっちゃ?なタイトルだが、まさにそんな内容の短篇。エソプトロン…むちゃくちゃええやん。鬼ロマンチック。「ティック=トック」も登場。

The Regular

短篇というより中篇。これだけで一冊成り立つ。押し寄せる緊迫感がすごく、読んでると心拍数が上がってくる。

他の作品に比べて過激な描写が多く、「お前らどうせこういうのが読みたいんだろ?」な余裕もうかがえる。そのうち映画化される気がする。