武書房

GREEのレビュー機能が終わるので今後はこっちに書きます。

スマイリーと仲間たち

長年積んでた。ちびちび読みを2か月ほど続けて2019/3/24やっと読了。

壮大な諜報戦の世界。周到な作戦と気の遠くなるような準備、待機。そして意外なほどあっけない結末。

宿敵カーラとの対決についに決着が!なんやけど、前作までを読んでないので人間関係や因縁などは推測せざるを得ないところがあった。推測はできるけど玩味するまではいかないと言うべきか。なので「三部作」の順番どおり読んだほうがよさそうです。

まぎれもないスパイ小説ではあるが、血湧き肉躍る!というやつではなく、もっと憂鬱で内省的な筆致で語られる。詩情というか筆力が凄い、解説で池澤夏樹さんが1987年に書かれてるように。

筆者が英国情報部にいたからこそのリアリティももちろんあるが、スマイリーはじめ登場人物たちの人間くささもまた非常に「リアル」。苦みばしったおっさんたちが悩み傷つきながらも使命に殉じようとする姿は、「人はなぜ仕事するのか?」という問いへの一つの(無言かつ雄弁な)答えになってるのではないか。「やるしかないから」。

携帯電話が出てこないと思ったら1979年の作品やったとは…俺が生まれる前やん! 当然インターネット以前。いまはもっとハイテクな手法(なにINT?)を駆使してるのだろう。いずれにせよ、「スパイ業界かっこいいなー、やってみたいわー」という気にはさせない小説である。「人間性を保つのが難しい過酷な業界、大変ですね」と思う。

 

些末すぎるけど惜しい点:

p.539に「モクスワ」表記あり。他には誤字脱字は見つからなかった。

偸盗、間然、など初めて知った漢語も多く、訳者(村上博基さん)すごい。勉強になりました。