武書房

GREEのレビュー機能が終わるので今後はこっちに書きます。

広島カープ誕生物語

今年の夏休み、小中高以来の友人に「広島をもうすぐ離れることになった」と言ったら、土曜にはるばる広島まで来てくれた。

友人が仕事用の参考書籍を買うというので紙屋町の紀伊國屋に連れていったら、カープ本の棚に…あった!!この伝説の漫画が。丸善は在庫4冊とも「取り置き」状態で置いてなかったのに!

即買い、倉式珈琲で半分ほど読み、友人と別れて帰ってから即読み。
涙と鼻水が止まらなかった。こんなに泣いたのは去年の『イミテーション・ゲーム』以来や。

中沢啓治著作集 1 広島カープ誕生物語

中沢啓治著作集 1 広島カープ誕生物語

 

広島の人がなんでそこまでカープを好きなのかがよくわかった。

この作品にもっと早く出会いたかった。

他県から広島入りする人向けの教科書に指定すべきやな。『はだしのゲン』と合わせて。

 

「熱狂的なファンの極端な行動」ネタとして引用されてるのは時々見てはいた。そんなツイートを見て笑ってもいたが…

ここまで自分が感動するとは。

広島在住という地元びいきもあるかもとはいえ、この作品が圧倒的な熱量、そして普遍的な価値を持っているということだろう。

ちなみに私、カープファンどころか野球ファンですらありません。もっと言うとスポーツ自体にほとんど興味ないのだが。

 

野球愛、郷土愛、親子愛、男女間の愛、動物への愛、そして人類愛。

あらゆる種類の愛情が全編通して満ち溢れている、凄まじい・素晴らしい作品でした。

原爆はこの世にない方が良かったに決まってるが、中沢啓治先生が地球にいてくれて良かった。

近藤ようこ初期作品集 1 仮想恋愛

1週間前。丸善に『広島カープ誕生物語』が置いてなく、かわりに別の赤い本を買って帰った。

さっき読みました。

近藤ようこ初期作品集 1 仮想恋愛

近藤ようこ初期作品集 1 仮想恋愛

 

近藤ようこ先生24歳の時の短編集。

言葉をできるだけ削ぎ落としたような、静かで詩的なお話たちでした。かっこいい。

全体的に「ガロ」っぽく、「ガロで読みました」みたいに言われることも多いそうなのだが、ガロ(原稿料なし!)に描いたことはなかったらしい。(でもこの本は青林工藝舎から出てる)

性的にブイブイいわしてるわけではないが肉体的・社会的には間違いなく女、みたいな女性たちが主人公。1982年3月のあとがき(2015年6月のあとがきも併録されてます)に“去勢された女”というテーマが語られており、なるほどなあと思った。

「子宮感覚」的な言葉は男の妄想、しかし自分の中の女性性に回帰=同化しないと「全き女性」になれない、といったような観念が作者にはあって、それを読んで妙に安心した。私自身いわゆるマッチョではない、「全き男性」ではまったくない(草食男子?w)、でも「ソープへ行」かないと「小僧ども」は「大人」になれないのか*1・・みたいな感覚が昔からあったので。

・・ああ、でも「文学」って昔からそういうものかも。

 

個別の感想

ホメオスタシス」「天王寺、参る」ちょいホラー。

「逆髪」これもちょっとホラー。

「籠りの冬」静かでいい。インターネット前、戦後、という時代も感じる。

「とりこの鳥子」意外性あって面白い。

「夏休み」思春期っぽくていい。

*1:今なら「んなわきゃーない」と言える

サラリーマン山崎シゲル 第3巻

一気読了。相変わらずクッソ面白うございました。 

ギャグがおもろいのはもちろんのこと、今回は特に絵の巧さに感心しました。

例えば24、25ページの動く太鼓&部長。こんな「止まってるのに動いてるように見える絵」、お手本あっても描ける気がしない。

34、35ページ「部長を投げる」も描画量こそ少ないけど、線一本でもミスったら…と思うと手が震えそう。絵ぇめっちゃ上手いですねほんま。

この3巻には特別編?「中学生山崎シゲル」もあるので、山崎シゲルファンにはオススメ!

帰還兵はなぜ自殺するのか

話題になったこの本、去年6月に買ってずっと積んでたけど、2016/8/27やっと読了。

帰還兵はなぜ自殺するのか (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)

帰還兵はなぜ自殺するのか (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)

 

ベタな言い方すると「圧倒的な筆力」!であった。凄い。
訳もかなりこなれていて読みやすい、が、内容は非常に重い。

 

ノンフィクションではあるが、一級の戦争文学のようにも読める。面白かったと言うと不謹慎だが。私は村上春樹さんのこの本を思い出した。

アンダ-グラウンド

アンダ-グラウンド

 

文章巧すぎて逆に脚色に見えるほどで、「アンタそれ見てたんかい?」「ほんまにその時そんなこと言ってたん?」な描写も多い(車内での夫婦喧嘩の場面など)。しかし「附記」を読むと筆者はほんまにイラクで従軍してるし、粘り強くヒアリングや調査してる。凄い、これこそプロの仕事やと思う。

 

戦争が文字通り「非人道的」であることを嫌というほどわからされる、傑作というか、うーん…凄い本でした。

戦争したがってる奴らは一回これ読め!

ぶらぶらひでお絵日記

何種類かのスケベ心から買ったこの本を今朝読了。

ぶらぶらひでお絵日記 (単行本コミックス)

ぶらぶらひでお絵日記 (単行本コミックス)

 

2008年6月~2009年6月の、漫画というより文字通り「絵日記」。なのでけっこうな情報量があり、読むのになかなか時間がかかった。

 

家でダラダラTV見てコンビニで立ち読みしてぶらぶら図書館寄って、たまに病院、断酒会……という一見「無職中年」のようなライフスタイルでありながら、実はかなりの量の本や映画などを、厳しい批評眼で読み・見てらっしゃる。吾妻先生の好奇心というか、「(サブ)カルチュア摂取欲」のようなものの強さに感服しました(SF・美少女寄りとかはあるでしょうが)。

 

巻末には担当編集者F氏との対談(?)「巨匠・吾妻ひでお先生、JKを熱く語る」も収録され、お得感ある。そこでなんと「JKウォッチング」の秘技が明かされる。「チラッと」「服装を」見てスケッチしてただけとは!(長時間見ると通報されるため)

名言ぽいのも出ました。

女の子の絵というのは、常に描いていないと描けなくなってしまうんですよ

これたぶん、すべての技芸に通じる話ですね。

 

個人的には、30年前買ったギターを引っ張り出してきて再開したという話が良かった。(最近Twitter上で人気の『しん・のた魚』の生演奏BGMは、おそらく南澤先生の『ソロ・ギターのしらべ スタジオジブリ作品集』から来てるのでしょう…)

井の頭公園で野外演奏デビューもされていたとは!! ちょうど私が三鷹に住んでた時期なので、ニアミスもしてたかも……と感慨深くなりました。

女子高生に殺されたい 1,2

久々に兎丸先生の新刊を読んだ。

完結したと知って先日1,2巻合わせて買い、さっき一気読み。

面白かった!!

女子高生に殺されたい 1 (BUNCH COMICS)

女子高生に殺されたい 1 (BUNCH COMICS)

 

主要登場人物は5人だけで、全員キャラがはっきりしていて魅力的。わかりやすい。

佐々木真帆ちゃんもいいけど後藤あおいもいいぞ!

主人公の東山春人(通称ヒガシー、受け身サイコ野郎)が自分と同学年で笑ってしまった。あぶないお年頃や。

女子高生に殺されたい 2 (BUNCH COMICS)

女子高生に殺されたい 2 (BUNCH COMICS)

 

最後、きれいに収束するかと思ったらひと捻りもあり。

●●●●は●なきゃ●●ない(ネタバレになるので伏せ字)という恐るべきお話でした。でも、ん~まあそやろね…という納得感もある。

  

●鷹市、●の頭公園の見覚えある風景も出てきて懐かしかった。

しかし三鷹に遺跡があったなんて全然知らんかったな。

大人のADHD: もっとも身近な発達障害 (ちくま新書)

2016/8/17実家で読了。(類書が非常に多いのでタイトルはフル貼り)

勉強になりました。

大人のADHD: もっとも身近な発達障害 (ちくま新書)

大人のADHD: もっとも身近な発達障害 (ちくま新書)

 

神アイドル・西田藍さんが薦めてらっしゃったので正直スケベ心で読んだのですが、紹介されてるADHDの症例を読んでるとかなり他人事ではなかった。小児期のADHD症状は10歳頃までの私には100%当てはまるw。よくぞ今まで大過なく生きてこられたものだ…。(人生が全体的に大過なんでは?という高尤度仮説はここでは措く)

 

子供のADHD (Attention Deficit Hyperactivity Disorder) は以前からわりと知られてたが、大人でもADHD症状を持ってる人がいることが日本でも最近知られてきた。調査の仕方により前後するが、だいたい人口の3~4%ぐらいはいるとか。

症状としてはASD (Autistic Spectrum Disorder) や鬱病とかぶるところが多いので、誤診されてきた人も多い。ADHDと診断されなかったため適切な処置を受けられない→不適応が改善されず結果的に鬱になる、という痛々しいケースも本書では数多く紹介されている。自傷家庭内暴力に至る人もいて、身につまされるというか、俺がこうなってても全然おかしくなかったで…とつらくなる。「本人も家族も生き地獄」的家庭も多いだろう。

ADHDがASD、鬱、境界例統合失調症などと併発することもあり得る。明確な線引きは難しく、医師(の知識)によっても診断は変わる。

(著者の専門外来などで)適切にADHDと診断されて薬が処方された場合、症状が軽減することも多い。それで社会生活に支障がなくなる(QOL上がる)人を増やしたい救いたい、というのが本書の趣旨と考えられる。

ちなみにADHDは以前は「注意欠多動性障害」と訳されてたが、最近は「注意欠多動性障害」と呼ばれてるそうな。しかし著者は欠陥(今いち)より欠如(ない)の方が酷いんでは?と軽く疑義を呈してる(p.12)。これは私もそう思った。

 

「おわりに」で、ADHDの人は(その「空気読めない」性質ゆえに)閉塞状況を打開する「トリックスター」となり得る、という持論が述べられている。ちょっと願望寄りかもしれないが、そういう面はたしかにありそうな気もする。

「あーもう、この人なんでこんな抜けてる/簡単なことができない/ガサツなの?!」じゃなくて、それはそういう症状(は言いすぎか、特質?)なのかもしれない、本人は真面目にやろうとしてるのかも。という寛容な態度で隣人に接するようにしたいと思った。まあこの自戒、だけじゃなく、社会通念として普及してほしいものですが。

 

勉強になったけど、ちょっと難点

  • 誤字かなり多い。「注意欠陥の実例」としてわざとやってるのか?!と疑ってしまうレベル…んなわきゃーないが。出版社もちゃんとチェックすべき
  • 重複してる内容が多いと感じた。150頁ぐらいに絞れそう。
  • 索引つけてほしいなー
  • p.102 埼玉生まれの「設楽」さんって…仮名にしては珍しすぎるような