武書房

GREEのレビュー機能が終わるので今後はこっちに書きます。

日本以外全部沈没

だいぶ空いてしまった。例によって蟻のようにアホ忙しくて。

積んでたこの本をやっと、こないだの東京出張の時に読んだ。

日本以外全部沈没―パニック短篇集 (角川文庫)

日本以外全部沈没―パニック短篇集 (角川文庫)

 

筒井さん初期のスラップスティック短篇集。古き良き時代という感じがいたします。

 

表題作はなんと映画化されてるらしく、「ひどい映画」だとあの書評家アイドル、西田藍さんが教えてくださいました。また見よう!

「新宿祭」は、何でも「エンタメ」化して商売のネタにする世相を皮肉ったような作品で、50年後の今も変わってませんぜと思うが、ゲバ棒や「構改派」など当時を感じさせるキーワードが多くて面白い。

有名な「農協月へ行く」はさすがに読んだ記憶あり。でも結末はやっぱり忘れてて、面白く読めた。

最後の「ワイド仇討」も何となく既読感あったが、“エキセントリックな女はなかなか忘れられない”ってこの話に出てきてたのね。どこで読んだ文章やっけ・・とここ数年気になってたのだった。最初読んだのは高校の頃かもしれんな・・

 

しかし凄いな。50年前の短篇を20年ぐらい前の俺が読んでて、それを今また読み返してる、この時の流れは・・・

松田洋子『相羽奈美の犬(全)』

毎週恒例、松田先生の漫画の時間です。

相羽奈美の犬(全) (ビームコミックス)

相羽奈美の犬(全) (ビームコミックス)

 

タイトルの(全)は「完全版」を意味するようです。(ということは不完全版も以前出てたのでしょう)

相羽奈美(あいわなみ)というヒロインのやや不自然な名前は、ピストルズ(阿部さんの小説じゃなくセックスの方)の "I wanna be me" から取ったんじゃないかと私は勝手に思いました。ちょっと無理あるかもやけど、作中にやたらピストルズネタ出てくるし。(Anarchy~に "no dogs body" みたいな歌詞もあったし。もしや雷造は・・ライドン?!)

 

ギャグ1/4、ホラー1/4、恋愛1/4、ストーカーの鬱屈した愛1/4、人間賛歌1/4、といった趣。絵だけ見ると黒っぽくて怖そうやけど、『笑ゥせぇるすまん』のようなブラックユーモアちゅうのか、 ギャグの要素が強いからぐんぐん読めてしまう。

そしてなんせ、奈美が可愛いから。も~松田先生、社会の闇じゃなくてたまには普通の学園ラブコメでも描いてくれりゃいいのに!!

…それTVエヴァ最終回に見えてしまいそうだが。そしてそういうのだけの作品なら「あーオタク向けの(萌え)漫画ね」って素通りしてしまうのだろうなあ。

というほどに、やはりこの作品も「普通のラブコメ」ではない。(例によって)登場人物は全員家庭崩壊してる。

闇があるからこそ光のありがたみが際立つということなのかもな。

あ、一応「スポーツ万能、成績優秀、性格もいい爽やかイケメン、ついでに家族も仲良し」な謎キャラ・雷造も出てくるけど、ヤツはちゃんと「UMA」として描かれてる。作者の誠意を感じます。

ただ一応主人公のニート少年もホスト風優男なんやけどね、『私を連れて~』の央治系の。どうせ犬になるんなら別にもっとキモオタ風でもええやんとも思うけど、それはさすがに夢がないってことなのか、女性作家としては・・

 

あとやっぱり松田先生は人魚姫が好きなんやなあと思いました。

松田洋子『好きだけじゃ続かない』

最近、松田洋子先生の漫画ばっかり読んでる気がする。心が求めてる。

しかし先生は寡作みたいなので、もうすぐ読破してしまうかもと思うと寂しくもある・・

今日丸善で買ってきたこの本も、表紙だけで既にたまらん感が滲み出してますね。

内容も期待を上回る、ナイスな大人の絵本(て書くと懐かしの深夜番組みたいやけど)でした。

 

表題作「好きだけじゃ続かない」は、甘酸っぱいというよりむしろ甘じょっぱい、田舎の中学生男女の淡い、淡すぎる恋愛感情(とその後の厳しい現実)を描いた傑作。キスどころか手も繋いでないのに、何なんこの愛しさはー。(や、実際にはそんな色気ある体験してなくても、架空の記憶を賞味できるのです人間は! 想像力!!)

松田先生の基調とも言える貧困、格差といったテーマは本作にも出てくるが、いわゆる「低層」の男が主人公というのは珍しいかも(まだ全部読んでないのでわかりませんが)。

 

他には、ヒロコ先生の分身「ヨウコちゃん」が主人公の「平凡なヨウコちゃん」。これは自伝色が強い。母、祖母も含めてかなりハードな家庭・・しかし悲壮感が全面に出てこないのは、ところどころ挿入されたギャグ(鉄板うんこネタ)と、ヨウコちゃんのゆるめの造形(あーみん先生の自画像みたいな中性的なキャラ)のおかげか。いや、実際は描ききれないほどの悲惨な体験やつらい思いもされてきたんでしょうけど。

うちの田舎も田んぼだらけやし、祖父は豚小屋もやってたし、母は姑から理不尽な攻撃を受けてたし、その祖母も過酷な労働をしてたし、てことでわりとなじみのある風景が多く、今の何不自由ない都会っ子らにはわからんかもねえこの感覚。などという感慨も持ったのだった。とかゆうてるワシも田舎のもやしっ子やったわけですが。

 

ともかく、やるせないけど可愛くて面白い、素晴らしい作品集でした。

潜行~地下アイドルの人に言えない生活

2/19、東京出張の折、下北沢「本屋B&B」でトークイベントというものに初めて参加した。私の愛慕する西田藍さんを拝見するために。

そのイベントに一緒に出演していたのが「地下アイドル」姫乃たまさんだった。

もちろんお目当ては西田さんで、それだけでも十分ありがたかったのだが、予備知識なく見た姫乃さんもたいへん可愛らしくまた軽妙で、この著書も読んでみたいと思ったのだった。

(いや実はその前の週末にhontoで注文してたんやけど。さすがに何の予習もなく行くのは失礼かと思って。でも出張に出る木曜には間に合わず・・)

潜行~地下アイドルの人に言えない生活

潜行~地下アイドルの人に言えない生活

 

イベント中に西田さんが「文章に自意識がない、客観性に驚愕した」みたいなことを仰っていたが、たしかに淡々と書かれていた。

しかし、これは16歳(!)から地下アイドルとして自覚的に活動し続けてきた、ある意味第一人者の体験談である。これはこの人にしか書けない。

すげーなーこの子。13歳も下やのに・・大したエンターテイナーやで・・とおっさんは感心しながら読みました。

文体は低温というかあまり力んでない感じ、しかし学業しながらバイトもして、アイドル活動や文筆業もして。ワーカホリックが昂じて一時鬱にもなったそうな(復活できてよかった!)。「サバイバルライブ」で勝ち抜くための戦略を練るあたり、実は相当な負けず嫌いなのではないか。その辺のギャップも人気の一因なのかも。

おっさんもこの「バランス釜アイドル」を応援したくなりました。ていうか、「(クラス|部活|職場)にこんな子いたらいいのにな~」と思わせる天才かもしれんねこの人は。

 

あとこの『潜行』、微エロなグラビアもついててお得です。

『私を連れて逃げて、お願い。』1~3巻

評判いいらしいのは知ってた。

あと『ここは退屈迎えに来て』と一時期混同してた。

う~ん、面白そうやけど、どうしよ…ぐらいに思ってたところ、最近最終巻が出て、私の愛慕するアイドル・西田藍さまが絶賛してたのに背中を押された。

金曜「今日は21時に上がります!」て宣言、結局21:45頃までいたけど丸善までダッシュし、どうにか閉店3分前に買えた。

(その足で裏のシャモニーモンブラン寄って読んでたら、店員さんに「私もそれ読みましたー、面白かったです」とか話しかけられて嬉しびっくり)

松田洋子(ヒロコ)先生の漫画は恥ずかしながら初めて読んだけど、絵が無性にかわいい。人もかわいい。本作は特におとぎ話・お花畑風の味付けというのもあると思うけど。台詞はそんなに多くないのに、味わいたくてつい読むのがスロウになってしまう。

 

本筋じゃないけど、ちょいちょい音楽ネタ(カレーの"ルー"とかw)も入ってておもろいです。去年 Hirth Martinez が亡くなった時も呟かれてたし、松田先生の趣味なんでしょうね。

松田洋子『ママゴト』1~3巻

昨日『私を連れて~』読んですっかりやられたので。

今日も買って一気読みしてしまった。

ママゴト 1 (ビームコミックス)

ママゴト 1 (ビームコミックス)

 

も~、たまらんわ。絵も話も。

なんなんこの「弱き者への限りない慈しみの眼差し」的な優しさ!! 渡る世間には拾う神もわりといるような気がしてくるわ。

子供を使うなんて反則!とか思ったけど、俺も去年姪っ子(4歳)に突然「おてがみ」渡されて泣いてしまったしなあ。「僕はここにいてもいいんだ!」てなったしなー。

映子ほど極端ではないにしても、子供の純粋さに大人が心動かされるってのはほんまにある。「純粋な子供」じゃないまま大きくなってしまった大人は特にそうかもしれない。

 

広島在住4年なので、作中の広島弁(福山弁かも)がネイティヴの発音で聴こえたのは幸運でした。

最近はここまでベタベタな広島弁で喋る人は少ないと思うけど、特に若い人は。

福岡とかもそうやけど、みんなもっと方言使えばいいのになーと思う。「標準語」なんか「テレビのひと」が使うもんやで。

 

ともかく、映子がかわいくてすばらしいです。

岡崎に捧ぐ 2

続けて最近出たばっかりの2巻も。中学生編。

岡崎に捧ぐ 2 (コミックス単行本)

岡崎に捧ぐ 2 (コミックス単行本)

 

第二次性徴、部活、校則、「スクールカースト」、初恋、不良、進路・・中学生キーワードが満載で、懐かしいやら痛々しいやら切ないやら。日本のたいがいの30代の琴線に触れてしまうのではないか。

そんな内外の変化に戸惑いながらも、依然自由に遊び回る山本さんは凄い。天性のエンターテイナーやなぁ。

漫画家になりたいと言い続けて実際なったわけやし。一見ゆるい漫画の人やけど、大したものですよ。

 

3巻も楽しみ・・ではあるが、高校編ってことはさらに波乱の展開になるんやろなあ。

人は子供のままではいられへんからなー。

 

関係ないけど、最近この1,2巻を山本という人の家で見かけて「あっ俺もこれ読みたかった」思って買ったのだった。そしてhontoから一緒に届いたのは山本直樹さんの漫画。トリプル山本。