武書房

GREEのレビュー機能が終わるので今後はこっちに書きます。

松田洋子『好きだけじゃ続かない』

最近、松田洋子先生の漫画ばっかり読んでる気がする。心が求めてる。

しかし先生は寡作みたいなので、もうすぐ読破してしまうかもと思うと寂しくもある・・

今日丸善で買ってきたこの本も、表紙だけで既にたまらん感が滲み出してますね。

内容も期待を上回る、ナイスな大人の絵本(て書くと懐かしの深夜番組みたいやけど)でした。

 

表題作「好きだけじゃ続かない」は、甘酸っぱいというよりむしろ甘じょっぱい、田舎の中学生男女の淡い、淡すぎる恋愛感情(とその後の厳しい現実)を描いた傑作。キスどころか手も繋いでないのに、何なんこの愛しさはー。(や、実際にはそんな色気ある体験してなくても、架空の記憶を賞味できるのです人間は! 想像力!!)

松田先生の基調とも言える貧困、格差といったテーマは本作にも出てくるが、いわゆる「低層」の男が主人公というのは珍しいかも(まだ全部読んでないのでわかりませんが)。

 

他には、ヒロコ先生の分身「ヨウコちゃん」が主人公の「平凡なヨウコちゃん」。これは自伝色が強い。母、祖母も含めてかなりハードな家庭・・しかし悲壮感が全面に出てこないのは、ところどころ挿入されたギャグ(鉄板うんこネタ)と、ヨウコちゃんのゆるめの造形(あーみん先生の自画像みたいな中性的なキャラ)のおかげか。いや、実際は描ききれないほどの悲惨な体験やつらい思いもされてきたんでしょうけど。

うちの田舎も田んぼだらけやし、祖父は豚小屋もやってたし、母は姑から理不尽な攻撃を受けてたし、その祖母も過酷な労働をしてたし、てことでわりとなじみのある風景が多く、今の何不自由ない都会っ子らにはわからんかもねえこの感覚。などという感慨も持ったのだった。とかゆうてるワシも田舎のもやしっ子やったわけですが。

 

ともかく、やるせないけど可愛くて面白い、素晴らしい作品集でした。