武書房

GREEのレビュー機能が終わるので今後はこっちに書きます。

崖際のワルツ 椎名うみ作品集

2018/8/26、ヤマトさん経由で honto から受け取ってすぐ読了。

崖際のワルツ 椎名うみ作品集 (アフタヌーンKC)

崖際のワルツ 椎名うみ作品集 (アフタヌーンKC)

 

青野くんに触りたいから死にたい』が大ブレイク中(と思う)の椎名うみ先生の短編集。ボインちゃん、セーラー服を燃やして、崖際のワルツの3作を収録。

不安定な少女たち*1の、一見すると何も起きない日常を切り取ったような作品群。平和な「世間」に対し、どこか狂ってる主人公たちが面白く、痛々しい。

女の子がみんなかわいい。おっぱいが大きくなったことも不登校になったことも演劇部に入ったこともない40前のおっさんにはすべてが眩しゅうございました。

*1:おっさん批評家が使いそうな表現できしょいですね

死後の恋: 夢野久作傑作選 (新潮文庫)

夏休み最終日の2018/8/19読了。

さすが鬼才!といういかれた面白さでした。約90年前に書かれた作品群というのが信じられないほど。

死後の恋: 夢野久作傑作選 (新潮文庫)

死後の恋: 夢野久作傑作選 (新潮文庫)

 

いわゆる幻想奇譚集という感じ。編者(日下三蔵氏)解説によると、『ドグラ・マグラ』は長すぎるし文体も独特すぎて「初めての夢野久作」としては不向き、こういう短編集を読んでからがいいとのこと。(俺は学生時代がんばって読んだけどなw)

「死後の恋」すごい。映像化かなり厳しい、グロ耽美な世界。ウラジオストクが「浦塩」なのもなんかすごい。

「瓶詰地獄」これも有名な作品、やっと読めた。字面から予想してた、瓶の中に詰め込まれて地獄の苦しみ…みたいな話では全然なかった。もっと切なくも美しい、かつ技巧に驚かされる短編。

「志那米の袋」立場が弱かった女性たちの苦しさ、無念が息苦しいほど感じられる。ちくしょうめ、クソ野郎どもに制裁を!ただオチは予想できると思う。

デビュー作「あやかしの鼓」。巻末に、「新青年」に応募して入選した時の久作自身の「所感」、乱歩をはじめえらい先輩方の「選評」も収録されててお得感あり。みなさん好悪コモゴモ、辛辣でおもろいのだが、「技術は未熟だがなんか持ってる、こいつやばい」という点は共通してるのがさすが。

目玉焼きの黄身 いつつぶす? 10

2回目の福岡→広島引っ越しのドサクサ時期に買い、ずっと積んでしまってた。

2018/7/29やっと読了。

「正しい箸の持ち方」の話が前篇・中篇・後篇とあり、「口内調味」の話が1~3でまだ続きそう。息の長いネタが多くなってきた!

箸の持ち方は私もたぶん怪しい、「正しい」が100点とすると70点前後な気はする。で、「正しい」持ち方ができると美味しく・楽しく食べられるようになる、と話は収束していくのだが・・・んーむ。

例えばジャンゴ・ラインハルトの左手は「正しく」持てないのでは?(いや親・人・中は動くからむしろ持ちやすい?)といった繊細な問題もあるので、ややこの結論は強引では?と思った。

「非口内調味」は今度試してみようw

「リング・ゲージ」、なるほどそんな技があるのかー!と感心。

あと「ブリリアントグリーン」w

しかし最近、二郎の顔が妙にキレイになった気がする…って読み返したら8巻で入院したあとあたりからか。うーむ。

ファーストラヴ

文芸書の新刊、しかもハードカバーの本を買った記憶はほぼないのだが、書評家アイドルの西田藍さんが絶賛されていたので私も買ってみました。

2018/7/28、ベローチェ袋町店で避暑を兼ねて一気読み。

ファーストラヴ

ファーストラヴ

 

面白かった。さすが直木賞受賞!だけあっていわゆる可読性高い。

冒頭すぐ、新聞記事みたいな説明的台詞で殺人事件の概要が伝えられる。お、そういうとこは衒わないスタイルか…まあ実用的でいいか、主旨はそこじゃないのだろう。などと好意的に解釈して読み進める。

だいぶ雑に言うと、虐待を受けていた少女の再生への道を探る話。この「少女」は「女性」でもあるし、もっと言うと「弱者」全般を指してもいい。(この作品で主題になってるのは前二者)

というわけで「重た」く、かつ重要な啓発メッセージを持った作品なのだが、サイコミステリー、法廷ドラマとしてもちゃんと「面白」く読めるところがすごい。古/今・東/西の場面転換もいわゆる映画的で、最後まで飽きさせない、さすがプロ作家。

「小説という形をとったMeToo運動」とも言えよう。創作ならではの普遍性という利点もある。こういう作品が発表され評価されるというのは良いことである反面、そもそもこういう作品が書かれざるを得なかったという状況がなんとも、やるせない。「戦争は戦争映画のネタじゃねぇんだよ!」(←今考えた)というやつだ。おっさんの一人としては、同性の奴らが世界を住みにくい場所にして申し訳ないと思う。だからみんな、シン(略

 

以下、どうでもいい話

本書は「台詞をすべて行頭から始める」スタイルで書かれている。文章の密度が下がるだけでなく、グルーヴ感が損なわれるんでは?とかいらん心配もしてしまうが、アメ●ロとかに親しんでる人向けにあえて採用したのかもしれない。

あとこれは完全に言いがかりですが、登場人物たちが美男美女揃いで(名前も無闇にかっこいい)、あんた私の人生にケンカ売ってんの感は否めず。まあ映画化とかを想定してのことか。ディーンフジオカ的な人が我聞さん(←これも仏教用語か)演ってる絵が浮かんでしまうわ…「環菜」役はもちろんあの人でしょう。

p.288「継続され続けた」は、私の天然構文チェッカーが反応してしまったw 直したい。

時代設定はどうなってるんやろ。大学時代に映画館で『17歳のカルテ』(原題 Girl, Interrupted)やってるってことは、俺と同世代(40前後)ちゃうの?とも思ったが、まあそこはいいか。

去年を待ちながら〔新訳版〕

去年山形さんが新訳を出されていた。たぶんまだ読んでないはずってことで買った。

2018/7/22、『未来のミライ』を観た夜に読了。

服むと時間移動(精神だけでなく物理的にも?!)できる「JJ-180」というドラッグを中心に展開する、壮大な星間戦争サスペンスかつ冷え切った夫婦仲の顛末!

なんせ平行宇宙が舞台なので過去も未来もどうとでもなり得る、最後までどうなるかわからないのが面白い。

地球と三つ巴で争う宇宙人、「リリスター」「リーグ」などがいきなり説明なしに出てきて戸惑うが、そのへんは例によって読んでるうちにわかると信じて流すとよいでしょう。カプセルを3分割して期間調整するとか、「解毒剤の解毒剤」とか、かなり無茶な展開もあるがw。

主人公エリックの妻キャシーを筆頭に、女性は相当モンスター的に描かれている。これは作者ディックが当時体験してた妻とのイザコザをあからさまに作品に投影してたからであり、うんすげえわかるーとも思うが、やはり女性が読んだら不快に感じたりするのだろうか。愛憎強くせめぎ合う感じではあるが、決して対等ではない。珍しく主人公(男)がダメ人間じゃなくエリートっぽいしな……

 

ちなみに「作者」に土井宏明さんの名前もあるけど、これはデザインの人ですね。(ハヤカワSF Tシャツの宣伝で名前を見かけて知った)

銀河の壺なおし〔新訳版〕

2018/6/23、東京出張の帰り、のぞみ43号で読了。

去年の10/20(あのSFアイドルの誕生日)に出た新訳版らしい。

壺なおしって何よ?とまず思うが、Pot-Healer つまり「壺を治す人」で、文字通りの意味であった。で、主人公がほんまに壺直し職人。銀河の。まず意味がわからない。

ストーリーもかなり荒唐無稽というか無茶苦茶で、映像化は厳しめな感じ。宇宙人も、人型でない異形の生物たちもいっぱい出てくる。(でもわりと文化的には地球寄り)

電子メールもSNSもない時代(原作は1969年刊行)に空想された未来の「ゲーム」や伝達手段は、レトロハイテクって風情で味わいがある。

好き嫌い分かれる作品らしいが、面白かった。

なおPKD小説には珍しく?、主人公はそこまでダメ人間じゃない。

 

ちなみに、巻末に

本書は活字が大きく読みやすい <トールサイズ> です。

とさりげなく書いてある。たしかに読みやすかった。

愛はさだめ、さだめは死

久々に電車通勤になったので10分/日ぐらいずつちびちび読み進め、2018/6/3読了。

思えば2016年。SFアイドル(でもある)西田藍さんが「接続された女」を書評なさってたので買ったのだった。行きの新幹線で読みはじめ、東京でそのことを話すと「もう接続されました?」と言われたことを覚えてる。神店ガルむすはもうなくなってしまったけれど。

頭いかれてる感じの実験的な作品が多い。表題作がまさにそうやし、その世界観・ルールが最後までよくわからない話もある。なんと言うか、すごい「尖ってる」短篇集。

そんな中、「接続された女」は比較的「小説らしい」と言える。面白かった。

「男たちの知らない女」が、ちょっと戦慄すべき作品だった。主人公フェントンがやや典型的すぎるきらいはあるが、女性から見た男性のどうしようもない蒙昧さ、絶望的な隔たり。筆者が女性と知ってて読んでるから「なるほど…」とも思えたが、発表当初はいろいろ物議を醸したんではないか?