武書房

GREEのレビュー機能が終わるので今後はこっちに書きます。

遊覧日記(ちくま文庫)

私自身武田姓ではあるが、武田百合子さんはおろか武田泰淳氏のこともほぼ知らなかった。

西田藍さんが素敵に紹介されていたので http://www.chikumashobo.co.jp/blog/pr_chikuma/entry/1121/

約2年前に買ったが、「不要不急」な本ではあったので長いこと積んでしまい、最近また広電などでちびちび読んで2018/9/29やっと読了。

武田百合子全作品(6) 遊覧日記(ちくま文庫)

武田百合子全作品(6) 遊覧日記(ちくま文庫)

 

優雅な日記でした。特にバブリーなところはないけども、(1980年代というより)昭和60年代の、まだ猥雑さ・垢ぬけなさの残る浅草などの特に事件性もない風景の描写たち。がとても「平和な昭和」を味わえて良い。

巖谷國士(いわやくにお)さんが解説(これもすばらしい)で著者を「見者」「貴種の人」と評されているが、まさに言い得て妙やと思う。遊覧というと「高等遊民」なんて言葉も連想するが、高等/下等などという謎の序列を無意味化してくれる「遊覧」の態度であった。

仕事の都合上浅草近辺によく行くので、吾妻橋花やしきなどそこそこ土地勘ある地域の話が多いのもよかった。

 

「あの頃」p.166

なにしろ去年なんかは、男が二十四歳、女が三十八歳の平均寿命でしたからね、いまは男一人に女がトラック一杯という御時勢ですからね

こういう状況が昭和の男を身勝手にしたのかもなー、とも思った。