武書房

GREEのレビュー機能が終わるので今後はこっちに書きます。

ファーストラヴ

文芸書の新刊、しかもハードカバーの本を買った記憶はほぼないのだが、書評家アイドルの西田藍さんが絶賛されていたので私も買ってみました。

2018/7/28、ベローチェ袋町店で避暑を兼ねて一気読み。

ファーストラヴ

ファーストラヴ

 

面白かった。さすが直木賞受賞!だけあっていわゆる可読性高い。

冒頭すぐ、新聞記事みたいな説明的台詞で殺人事件の概要が伝えられる。お、そういうとこは衒わないスタイルか…まあ実用的でいいか、主旨はそこじゃないのだろう。などと好意的に解釈して読み進める。

だいぶ雑に言うと、虐待を受けていた少女の再生への道を探る話。この「少女」は「女性」でもあるし、もっと言うと「弱者」全般を指してもいい。(この作品で主題になってるのは前二者)

というわけで「重た」く、かつ重要な啓発メッセージを持った作品なのだが、サイコミステリー、法廷ドラマとしてもちゃんと「面白」く読めるところがすごい。古/今・東/西の場面転換もいわゆる映画的で、最後まで飽きさせない、さすがプロ作家。

「小説という形をとったMeToo運動」とも言えよう。創作ならではの普遍性という利点もある。こういう作品が発表され評価されるというのは良いことである反面、そもそもこういう作品が書かれざるを得なかったという状況がなんとも、やるせない。「戦争は戦争映画のネタじゃねぇんだよ!」(←今考えた)というやつだ。おっさんの一人としては、同性の奴らが世界を住みにくい場所にして申し訳ないと思う。だからみんな、シン(略

 

以下、どうでもいい話

本書は「台詞をすべて行頭から始める」スタイルで書かれている。文章の密度が下がるだけでなく、グルーヴ感が損なわれるんでは?とかいらん心配もしてしまうが、アメ●ロとかに親しんでる人向けにあえて採用したのかもしれない。

あとこれは完全に言いがかりですが、登場人物たちが美男美女揃いで(名前も無闇にかっこいい)、あんた私の人生にケンカ売ってんの感は否めず。まあ映画化とかを想定してのことか。ディーンフジオカ的な人が我聞さん(←これも仏教用語か)演ってる絵が浮かんでしまうわ…「環菜」役はもちろんあの人でしょう。

p.288「継続され続けた」は、私の天然構文チェッカーが反応してしまったw 直したい。

時代設定はどうなってるんやろ。大学時代に映画館で『17歳のカルテ』(原題 Girl, Interrupted)やってるってことは、俺と同世代(40前後)ちゃうの?とも思ったが、まあそこはいいか。