黒い表紙のこの本を読みました。
- 作者: フィリップ・K・ディック,土井宏明(ポジトロン),小尾芙佐
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1977/05/31
- メディア: 文庫
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カラフルで魅力的な登場人物たち、洗練された台詞、複雑に絡み合うそれぞれの思惑・・最後までどうなるか、誰が「敵」で誰が「味方」なのかもよくわからない。最初の長篇とは思えないほどの完成度でした。
原題は Solar Lottery。直訳すると「太陽宝くじ」か。
舞台は23世紀初頭。地球では「ボトル」(ほぼ説明なし。中央コンピュータみたいなもんか)がランダムに最高権力者=「クイズマスター」を選び出す「トイッチ(twitch)」という統治システムを採用していた。クイズマスターにはミュータント人類「ティープ」が従者としてつく、が、公募で選ばれる「刺客」に命を狙われることにもなる。という不条理な制度。
ティープ族には「思語」を送受信できる能力(いわゆるテレパシー、動詞もティープ)があるため、なみの刺客の挑戦なら防御できる。
しかし、そこに先代クイズマスター・ヴェリックの部下、ハーブ・ムーアが不確定性原理とミニマックス法に基づく「Mゲーム」理論を武器に、刺客を送り込む・・
もうどういうことやねん!という設定が連打され、ついていくのが大変。
ペリグの操縦ってどういう仕組みなん?宇宙のどこまで届くの?とか強引なところは多々ある。
クイズマスターとか言ってるけど別にクイズしてないし。
しかし
「社会に適応できない自分は狂ってるのか、それともこの社会が狂ってるのか?」
「自分は何者か? 他人と入れ替わったらどうなるのか?」
といった、PKD作品で繰り返し語られるテーマは、この時既に鳴り響いている。
面白かった。
あと40年近く前とはいえ、小尾さんの訳はさすがスムーズで読みやすかった。